【簿記3級】第41回 決算整理(費用の前払い・未払い)

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今回の講義では、決算手続の第2ステップである決算整理のうち、費用の前払い・未払いについて解説します。

【決算手続の手順】
① 試算表の作成
② 決算整理 ←今ここ
③ 精算表の作成
④ 損益計算書・貸借対照表の作成
⑤ 帳簿の締切

決算整理(決算整理仕訳)とは

決算整理(けっさんせいり)とは、期中の仕訳とは別に、損益計算書と貸借対照表を完成させるために、決算時に必要な仕訳を行うことをいいます。

決算整理として行われる仕訳のことを決算整理仕訳といいます。

決算整理仕訳の一部はすでに学習済みで、これまでの講義で登場した決算整理仕訳は以下の通りです。

現金過不足の処理
当座借越の振替
貸倒引当金の設定
固定資産の減価償却
未払消費税の確定
法人税等の確定
損益振替・資本振替(当期純利益または当期純損失の計上)

今回は決算整理仕訳のうち、費用の前払い・未払いについて解説します。

費用の前払い

まずは費用の前払いについて確認していきましょう。以下の取引例を見てください。

【取引例】
X1年10月1日、小早川株式会社は、事業用オフィスの1年分家賃である12,000円を現金で支払いました。
なお当期の会計期間は、X1年4月1日からX2年3月31日です。
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このとき、小早川株式会社は、以下の通り仕訳します。

借方 金額 貸方 金額
支払家賃 12,000 現金 12,000

事業用オフィスの家賃を支払っているので、費用の増加として借方に支払家賃12,000円を記録します。

また現金で支払っているので、資産の減少として貸方に現金12,000円を記録します。

いったんは上記の通り仕訳をするのですが、取引例の文章より、支払った12,000円は1年分の家賃なので、X1年10月1日からX2年9月30日までの家賃分ということになります。

ここで、当期の会計期間はX1年4月1日からX2年3月31日なので、X2年4月1日からX2年9月30日までの6カ月間の家賃は、次期の費用となります

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そのため、決算整理仕訳として、いったん計上した1年分の支払家賃のうち、6か月分を減額する処理を行います。

では取引例を用いて、具体的な仕訳を確認してみましょう。

決算整理仕訳

【取引例】
X2年3月31日、小早川株式会社は決算日を迎えたため、X1年10月1日に支払っていた事業用オフィスの1年分家賃12,000円について、次期の費用となる部分を前払い処理しました。

このとき、小早川株式会社は、以下の通り仕訳します。

借方 金額 貸方 金額
前払家賃 6,000 支払家賃 6,000

1年分の家賃12,000円のうち、6か月分の6,000円については次期の費用とすべきなので、すでに計上済みの支払家賃を減額させる必要があります。

そこで費用の減少として、貸方に支払家賃6,000円を記録します。

また、6カ月分の家賃は前払いしているため、次期以降にサービスを受ける権利が増えたと考えることができます。

そこで資産の増加として、借方に前払家賃(まえばらいやちん)6,000円を記録します。

この取引例では、支払家賃を取り扱っていましたが、他にも支払利息、支払保険料、支払地代といった費用を前払いすることもあります。

いずれの費用でも考え方は同じで、決算整理で前払処理したときの勘定科目はそれぞれ、前払利息、前払保険料、前払地代となります。

またこれらの科目を総称して「前払費用(まえばらいひよう)」と呼びます。

翌期首の再振替仕訳

決算整理で前払い処理を行った場合、翌期首に逆の仕訳を起こすことで、翌期の費用として計上します。

これを再振替仕訳(さいふりかえしわけ)をいいます。(再振替仕訳については、当座借越の振替でも登場したので学習済みです)

【取引例】
X2年4月1日、小早川株式会社は、期首の再振替仕訳として、前期末に前払い処理をした事業用オフィスの6か月分家賃6,000円について、再振替仕訳を行いました。

このとき、小早川株式会社は、以下の通り仕訳します。

借方 金額 貸方 金額
支払家賃 6,000 前払家賃 6,000

上記の通り、前期末の決算整理仕訳と逆の仕訳を行うことで、前期に前払処理した費用が、当期の費用として計上されます

費用の未払い

では次に、費用の未払いについて確認していきましょう。以下の取引例を見てください。

【取引例】
X1年11月1日、小早川株式会社は、トラリン銀行より30,000円を借り入れ、当座預金口座に振り込まれました。
借入期間は1年間、年利率2%、利息は返済時に支払うことになっています。
なお当期の会計期間は、X1年4月1日からX2年3月31日です。

このとき、小早川株式会社は、以下の通り仕訳します。

借方 金額 貸方 金額
当座預金 30,000 借入金 30,000

借り入れにより当座預金が増加したので、借方に当座預金30,000円を記録します。

また負債の増加として、貸方に借入金30,000円を記録します。

なお利息については、借入金の返済時(X2年10月31日)に支払うこととなっているので、この時点で仕訳は必要ありません。

ただし利息は、資金の借入期間を通じて発生するという性質の費用です。

そのため実際に支払っていなくても、借入期間に応じて費用(支払利息)を計上する必要があります

そこで決算整理仕訳にて、借入日から決算日までの期間にかかる利息を、当期の費用として計上するのです。

では具体的な仕訳を取引例を用いて確認してみましょう。

決算整理仕訳

【取引例】
X2年3月31日、小早川株式会社は、決算日を迎えたため、X1年11月1日にトラリン銀行から借り入れた30,000円にかかる利息を未払処理しました。
なお当該借入金の借入期間は1年間、年利率2%、利息は返済時に支払うことになっています。

このとき、小早川株式会社は、以下の通り仕訳します。

借方 金額 貸方 金額
支払利息 250 未払利息 250

借入金30,000円にかかる利息は、600円(=借入額30,000×年利率2%)と計算されます。

このうち、借入日X1年11月1日から決算日X2年3月31日までの5カ月にかかる利息250円(=600円×5カ月÷12カ月)は、当期の費用として計上する必要があります。

そこで、費用の増加として借方に支払利息250円を記録します。

またこの250円は未だ支払っておらず、将来支払う義務が生じたと考えられるため、負債の増加として貸方に未払利息(みばらいりそく)250円を記録します。

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この取引例では、支払利息を取り扱っていましたが、他にも支払家賃、支払保険料、支払地代といった費用を未払処理することもあります。

いずれの費用でも考え方は同じで、決算整理で未払処理したときの勘定科目はそれぞれ、未払家賃、未払保険料、未払地代となります。

またこれらの科目を総称して「未払費用(みばらいひよう)」と呼びます。

翌期首の再振替仕訳

決算整理で未払処理を行った場合、翌期首には、逆の仕訳(再振替仕訳)を起こします。

これは、前期の費用とすべき支払利息まで、当期の費用として計上されてしまうことを防ぐためです。

以下の取引例で具体的に確認してみましょう。

【取引例】
X2年4月1日、小早川株式会社は、期首の再振替仕訳として、前期末に未払処理をした支払利息250円について、再振替仕訳を行いました。またX2年10月31日、トラリン銀行に対する借入金30,000円を、利息600円と合わせて当座預金口座から支払いました。

このとき、期首であるX2年4月1日に小早川株式会社は、以下の通り再振替仕訳を行います。

借方 金額 貸方 金額
未払利息 250 支払利息 250

また、返済日であるX2年10月31日に小早川株式会社は、以下の通り仕訳します。

借方 金額 貸方 金額
借入金 30,000 当座預金 30,600
支払利息 600    

上記の通り、返済日には支払利息600円が計上されますが、このうち250円は前期に計上済みの費用です

そのため、期首時点で再振替仕訳を行っておき、支払利息のマイナスとして250円を貸方計上することで、支払利息が過大に計上されることを防いでいるのです。

 

まとめ

■ 決算整理仕訳(費用の前払い)

借方 金額 貸方 金額
前払家賃 6,000 支払家賃 6,000

■ 翌期首の再振替仕訳(費用の前払い)

借方 金額 貸方 金額
支払家賃 6,000 前払家賃 6,000

■ 決算整理仕訳(費用の未払い)

借方 金額 貸方 金額
支払利息 250 未払利息 250

■ 翌期首の再振替仕訳(費用の未払い)

借方 金額 貸方 金額
未払利息 250 支払利息 250

 

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